【このエントリーはCNET読者ブログ(2010年6月閉鎖)に掲載していたものです】
CNET Japanの記事「マッシュアップは儲かるか–大ブームの現状と可能性」を読んで。
Google Mapsとそっくりなインタフェースを持ったサイトを見たことがある人は多いだろう。これはGoogle Mapsの機能を利用して、別データベースにある情報を地図上にマッピングするなどして実現している。現在のマッシュアップの代表的な例だ。これによって、例えば地図のインタフェースを自前で作る必要がなくなり、サイト制作者は、より重要な部分の構築に集中することができる。
が、しかし、現在はまだ視覚的なおもしろさに頼ったサイトが多いように感じる。
かつて、画面に絵を描こうと円ひとつ描くにも、点を打つところからプログラミングしなければならなかった時代があった。その当時は「いかに円を描くか」ということが最初の課題だったが、それらが基本機能として提供されるようになると、今度は「いかに円を使うか」ということを考えられるようになった。
今は(例えば)地図を表示することにリソースを割かなくてもよくなった分、どう地図を使うかにリソースを使うべき段階である。
マッシュアップの本質はこうしたリソースの効率的配分を通し、労せずして考え方のステージを上げられることであるとともに、サービス構築手法のひとつに過ぎないと思っている。だから単に地図を表示するだけであれば何もしていないのと一緒なのだ。
見た目の面白さだけではなく、決して派手ではないが、それぞれの情報が持つ意味を繋げ、新しい価値を作り出すような、そんなサービスを構築することにこそ、マッシュアップは活用されるべきだと思う。
そこまではまったく届いてはいないが、Google Mapsのような地図と、先ごろ発表されたGoogle Calendarのようなカレンダー、その他いくつかの情報をマッシュアップすると、ちょっと考えただけでもいろいろなことが考えられる。
例えばこんな感じだ。
カレンダーに予定を書くと、日付・時間とテキスト情報を元に、それに対応する場所の候補が表示される。ユーザーはここから選択することで入力の手間を省くことができる。ちなみに、この候補は「同じ日程で同じ予定を入れた誰か」が入力した場所情報を再利用したものである。これはCDのデータベースである「CDDB」と同じような仕組みだ。もし、候補がまだなければちょっと手間をかけて入力してやることで、その情報を他のユーザーが活用することができる。
また、場所情報を入力することで乗換案内のようなデータベースから当日の移動手段の検索や移動時間の計算を自動的に行うこともできる。さらに天気予報データベースから現地の天気予報情報も自動参照し、移動手段検索にフィードバックすることで雨ならなるべく徒歩を避ける、といった調整も可能だろう。レストラン情報データベースと連携すれば、ユーザーの好みの料理を中心に、いくつか目的地周辺のレストランをピックアップして、当日現地をさまよわなくてもよいようにすることができる。
Webベースのサービスが連携するという考え方、これはは数年前から注目されている「Webサービス」の考え方そのものだ。マッシュアップという命名によってやっとその考えが一般にも普及し始めたというべきだろうか。
こうした流れの中で、視覚インタフェースだけではなく、情報が持つ意味の組み合わせこそがより重要な価値を持つマッシュアップ、いうなれば「セマンティック・マッシュアップ」が今後の主流となっていくのではないか。
参考:
■マッシュアップは儲かるか–大ブームの現状と可能性
http://japan.cnet.com/special/story/0,2000056049,20102676,00.htm
■グーグル、Google Localで実験–地図広告の機能強化を計画か
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20099607,00.htm
■マッシュアップ–仮想空間と現実をつなぐ地図
http://japan.cnet.com/column/web20now/story/0,2000055934,20093879,00.htm
■ヤフー、新しいマッシュアップツールを提供へ
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20098042,00.htm
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