【このエントリーはCNET読者ブログ(2010年6月閉鎖)に掲載していたものです】
個人向け動画編集ソフトの充実によって、個人で動画編集を行うことが珍しくなくなって久しい。思えば、数年前までは編集した動画作品の配布方法といえばDVDに焼くことだった。インターネットで配信することはできないことはなかったが、一度すべてをダウンロードさせる必要があったり、ストリーミングは別途費用がかかったり、ハードルが高かったのも事実だ。
だが、現在はYouTubeのようなアップロードした動画を簡単にストリーミングできるサービスの登場によってハードルがかなり低くなってきており、特にPCやインターネットに詳しくないユーザーでも動画のストリーミング配信ができるようになった。また、YouTubeではユーザー登録してマイページを持つことができ、SNSのように友人をフレンドリストに登録して、気に入ったビデオを共有したりすることができる。これによって情報の共有が進み、面白いビデオはまたたくまに皆の知るところとなるのだ。こうした動きを背景として、ユーザーが制作するビデオが企業の製品・サービスの人気に影響するケースが増えてきた。また、同時に、この動きを積極的に取り入れようとする企業も出てきている。「CMコンテスト」の開催などはその典型だ。(参考記事参照)
これらは今後どういった動きを見せるのだろうか。
まず課題として考えられるのは、ビデオ制作ユーザーをいかに増やすかだろう。PCでのビデオ制作は、以前よりもハードルが低くなったとはいいつつも、それでもやはりごく一般的なユーザーレベルにまで下がってきたとはいいがたい。ビデオカメラで撮影し、PCに取り込み、編集ソフトを駆使して動画ファイルを作成し、YouTubeなどにアップロードするという手順は、簡単な人には簡単だが、いつもはメールと調べものくらいにしかネットを使わないという人には相当な難関だ。結果的に制作数が爆発的に増えない要因になっている。
CMコンテストを主催する企業にとってこれは重要な問題だ。今でもコンテスト実施の結果としてコンテンツを増やす効果はあるかもしれないが、ビデオ制作者もターゲット顧客と想定し、制作を通して商品・サービスへのロイヤルティ(忠誠心)を高める効果を期待するためには、ターゲットであるビデオ制作者の増加は不可欠である。
このためにはビデオ制作の主なハードルである「撮影動画のデータ化」「動画編集」の問題を解決しなければならないが、これにはすでにひとつの解決策が示されていると思う。
動画撮影機能のある携帯電話の活用だ。
PCでの動画作成は自由度が高い分、見栄えをよくするための作業に前述のようなハードルがある。その点、携帯電話は解像度など画像のきれいさや撮影時間、編集の自由度は極端に制限されるが、その代わり、撮影した時点ですでにデータ化されておりメールですぐにアップロードできるなど、手軽さでいえばダントツに優れている。これによって技術を持たないユーザーも「アイデア」で勝負することができ、結果として参加者を増やすことができるのだ。
ドリンク剤「眠眠打破」の「CMオンエアーバトル」などはこれの好例といえる。見ていると本当に(いい意味で)しょうもないものが多いのだが、そのしょうもなさゆえになぜか見入ってしまっている自分に気づく。1本あたりが数秒から数十秒と短いのもいい。
さらに、不適切なビデオを意図的にアップロードするなどの破壊的活動に対応する観点から見ても、携帯電話で撮影したビデオは(現在のところ)サイズがPC向けに比べて大きくなく、人的監視コストを抑えることができるのも利点といえる。例えばPCの画面上に同時に多数表示して一度にチェックする仕組みを構築することもできそうだ。
このように携帯電話を使ったユーザー制作ビデオの活用は、企業にとって効果とコストのバランスが思いのほかよいことがわかる。企業活動におけるユーザー制作ビデオの活用事例は未だ限定的な面が多いが、今後、携帯電話の利用ケースから盛り上がっていくのではないだろうか。
参考記事:
■ハリウッドの注目を一身に集める「YouTube」とは
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20099877,00.htm
■「草の根ビデオ広告」に便乗する大企業の期待と課題
http://japan.cnet.com/special/story/0,2000056049,20101204,00.htm
■YouTubeの人気ビデオがもたらした思わぬ宣伝効果
http://blog.japan.cnet.com/staff/archives/002711.html
■米ロジテック製ウェブカメラの売上が急増–火付け役は17歳少女が制作したビデオ
http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20099558,00.htm
■モジラ、草の根マーケティングを展開–今回はFirefoxファン制作のビデオで
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20101212,00.htm
■眠眠打破・CMオンエアーバトル2
http://minmin.tv/
(2006/04/24追加)
■インターネット上で急速に注目されるショートコンテンツ
http://japan.cnet.com/column/mori/story/0,2000055916,20102175,00.htm
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