国内でもしばしば聞かれるようになった「ゲーミフィケーション」のような考え方は特定の技術やテクニックを指すというよりも、「物事をおもしろくする」というユーザー体験のデザイン手法の一種と考えるのが正しい。また、こうした概念の活用事例として伝統的なスタンプカードがよく引き合いに出されることからもわかるように、概念自体は従来から存在しているものだ。そのため、なぜこれが「今さら」話題となっているのか理解しにくいという人も多いだろう。

 こうした手法に目が向けられている背景に、世の中に情報があまりにも多くなってしまったという点がある。情報過多への対応には、まず多くの情報を要約する方法がある。Twitterなどに流れた話題をサマライズする「Summify」や「Crowsnest」「vingow」といったサービスがこれを目指している。こうしたサービスは情報の受け側による対応のひとつとして最近増えてきた。

 逆に情報を送り出す側としては雑多な情報に埋もれないようにしなければならない。そのためには良質なコンテンツであることはもちろんだが、これに加えてユーザーにきちんとコンテンツを体験してもらうことが必要である。これに「物事をおもしろくする」手法が活用され、より楽しむことによって心理的な情報処理コストが下がり、情報処理効率を上げることに繋がる。類似の手法としては創造的な議論を可能にする「ゲームストーミング」などもそうだ。情報過多の時代、「楽しむ」ことで効率化する手法がオンライン/オフラインともに広がりつつある。

(本記事は「東京IT新聞」に寄稿させていただいた記事の元原稿です。許可を得てアーカイブとして本誌掲載の1週間後を目処に掲載しています。本誌は画像付きですが、こちらはテキストのみの掲載になります。)

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