【このエントリーはCNET読者ブログ(2010年6月閉鎖)に掲載していたものです】

コンセプチュアルバンド「元気ロケッツ」がグッドデザイン賞を受賞した。CDジャケットのデザインが、ではない。これは「元気ロケッツ」というコンセプトデザインに対するものだと認識している。宇宙で生まれ育ち、地球に憧れながらも未だ地上に降り立ったことのない30年後の18歳であるLumiがフロントアクトとつとめ、地球への憧れを歌う、それが「元気ロケッツ」である。楽曲はダンサブルでポジティブ、その名のとおり「元気」になる音楽だ。今年7月にはデビューアルバムをリリースした。

だが、プロデューサーの水口哲也氏はそうしたいCDに至る、わゆる音楽の展開を考えていたわけではない。

そうした経緯を含め、元気ロケッツがどのようにデザインされてきたのか、今回のグッドデザイン受賞を記念したトークイベントに参加してきた。

グッドデザイン賞受賞記念特別トーク
コンセプチュアルバンド「元気ロケッツ」をどうデザインしたのか?

聞き手はジャーナリストでグッドデザインの選考委員でもある福冨忠和氏。実は、福富氏は覚えているかわからないが、学生時代の10数年前に「マルチメディア研究会」という今となってはちょっと恥ずかしい名前の研究会でお会いしたことがある。その後も数年おきにこうしたイベントでご挨拶はさせていただいてはいる。水口氏にも1年前くらいに本職の取材でお会いして、本題とは違う部分でいろいろと楽しいお話を伺ったことがある。そういうわけで、このお二人が登壇するというのは個人的にも大変楽しみな組み合わせだったというわけだ。

さて、元気ロケッツは当初から音楽企画としての展開が考えられていたわけでないと話したが、では、どこから元気ロケッツは生まれたのか。それは「ゲーム」だ。水口氏はゲームクリエイターとしても著名で「セガラリー」「スペースチャンネル5」「Rez」などをプロデュースしている。そうしたゲームのひとつ、「ルミネス」から元気ロケッツは生まれた。いや、正確に言うと楽曲が先にうまれたのだ。

「いろいろなアーティストに楽曲を提供してもらったんですが、もうひとつ、『聞いて元気になる曲』がほしかったんです。どうしてもイメージに合う曲がなかったので作ってしまおうということになりました。」

その曲が「Heavenly Star」だ。そう、元気ロケッツはゲームの1楽曲から生まれた。

題名の言葉はそんな状況を表したものだ。数十万枚売れるパッケージメディアはCDであろうがゲームであろうが、数十枚分のメディア価値を持つ。ゲームの価値が一般的に認知されてきたことで、メディア的価値も高まり、ここ数年でゲーム自体をメディアととらえたゲーム内広告ビジネスが本格化してきている。

ところで、元気ロケッツのコンセプトからも感じられるように、水口氏の興味分野は宇宙も含まれている。それは同氏のインスピレーションの源のひとつでもある。

「例えば宇宙遊泳をしながら地球を見ると、光の当たっているところと影になっているところの境目は単なる『線』にしか見えません。でも『線』にいる地上の人には夕日が見えていて、風を感じている。そのときの二者の距離こそが『リアル』で、そこで何を感じるか」

私も水口氏も本当の意味では後者の夕日を見る気持ちしかわからない。しかし、宇宙しか知らない元気ロケッツの「Lumi」は逆に夕日を見る気持ちがわからないだろう。この時、両者の間には埋まりようのないもどかしさと同時に、確かに「なにか」が存在している。僕は元気ロケッツの楽曲はポジティブな元気さの中に、時折いいようのない切なさに似た気持ちを感じることがある。それこそが、その「なにか」なのかもしれない。

 

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