東日本大震災では多くの地域が被災した。道路が破壊されて避難所が陸の孤島となり、支援物資がなかなか届かない地域もあったと聞く。さらに破壊された道路を避けようにも普段頼りにしている交通情報が機能しなくなっている。それまでの日常からは考えも及ばない状況だ。

 そうした中、自動車メーカーのホンダ、トヨタ、日産、そしてカーナビを製造するパイオニアはGoogleと協力し、それぞれのユーザーが自動車で走った走行ログを元に道路の「通行実績」をGoogleマップにマッピングした「自動車・通行実績情報マップ」を公開した。過去24時間に交通のあった道路は濃い青で表示され、実際に通れることを示している。地震直後は隙間が多く、弱々しかった線も日を追うごとに長く密になっていく様子は心強い。なによりこの取り組みによって多くの人が寸断された道の突端で立ち尽くす事態を避けることができたはずだ。

 この取り組みで最も重要なのは、利用者にとっての価値を創りだしたのも利用者であったということだ。多くの利用者が自分の情報(走行ログ)を少しずつ提供することで大きな意義のあるデータベースを構築した。

 この例からも、foursquareやコロプラのような位置情報サービスが盛んになると、ユーザーの物理的な行動ログがライフログの中で大きな意味を持ってくることがわかる。そのままでは雑多なうごめきに過ぎないが「自動車・通行実績情報マップ」のように、ある見方で「意味付け」を与えるとデータは語り始める。こうした活用はネットの黎明期から語られてきたが、それが実現に向かっているようだ。

(本記事は「東京IT新聞」に寄稿させていただいた記事の元原稿です。許可を得てアーカイブとして本誌掲載の1週間後を目処に掲載しています。本誌は画像付きですが、こちらはテキストのみの掲載になります。)

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