日本のネット界隈で「turntable.fm」というサービスが話題となった。turntable.fmはユーザーがオンラインの仮想クラブでDJとなり、皆で音楽を楽しむサービスだ。ユーザーはアバターとなって仮想クラブ内に現れる。DJとなれるのは最大で5人まで。流したい音楽を検索し、プレイリストに加えればひとり1曲ずつ順番にストリーミング再生される。「観客」として参加する場合はボタンクリックで選曲センスを評価する。気に入った観客が多ければ多くのアバターが体を揺らし、気に入られなければ曲をスキップされることもある。チャットで語り合うことも可能だ。

 こうした音楽の楽しみ方がウケて評価を集めていたturntable.fmだが、6月のある日、アメリカ国外から利用することができなくなってしまった。課題は認識されていただけに想定されていたが残念だ。今後の再上陸を期待したい。

 同時に、オンラインでの体験を共有する仕組みとして「アバター」と「仮想クラブ」という手法が使用されている点も興味深い。単純に音楽を共有して楽しむだけであればアイコンでもいいはずだが、コンセプトを分かりやすく伝え、にぎわいや観客の反応を可視化し、ポイントによるアバターのグレードアップといったサービスの利用モチベーション設計の素材としてアバターが有用であったということだろう。

 逆にユーザーがアバターを動かすことや自由にカスタマイズする機能はないが、これによって「音楽を共に楽しむ」というコンセプトがより強化されている。アバターという表現を適切に活用した好例といえそうだ。

(本記事は「東京IT新聞」に寄稿させていただいた記事の元原稿です。許可を得てアーカイブとして本誌掲載の1週間後を目処に掲載しています。本誌は画像付きですが、こちらはテキストのみの掲載になります。)

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