【このエントリーはCNET読者ブログ(2010年6月閉鎖)に掲載していたものです】
メディア・アーティスト岩井俊雄さんとYAMAHAのコラボレーションによって開発された「楽器」である「TENORI-ON(テノリオン)」を12月はじめに購入して1ヶ月たった。TENORI-ONは知っている方はわかと思うが、その演奏姿勢からして新しいもので、両手で本体の両側をつかみ、本を読むように持ち上げて演奏する(自分はテーブルに置いていじってるけど…)。大きさは特に大きくもなく小さくもなく、マグネシウム合金の周辺ボディ部分はほどよい重さがあって安定感がある。ただ、長時間持ってパフォーマンスするのはつらいかもしれない(予定はないけど…)。譜面台のような形のスタンディングパフォーマンス用の台があればうれしい(使う予定はないけど…)。
「楽器」というものを買うのは実に10年以上ぶりだった。もっとも、前は憧れが先行してマスターできずじまいだったが、そうした憧れというものはそうそう消えない類のものもあるらしい。結局買ってしまうことになった。
TENORI-ONの音に関してはあいにく判断基準を持っていないもので詳しくはわからないが、自分的にはまったく問題ない。演奏モードもそれぞれ特徴があり、偶然性も加味した演奏も可能だ。あるモードではTENORI-ON特有の演奏で簡単に幻想的な空間を作り出すことができ、最初は自分が出した音に驚いた。(期せずしてホラー空間になったりするけど)
なにしろ16×16のボタンで音階も時間軸もまかなおうというのが潔い。これによって要求音楽スキルのハードルが大きく下がっている。 これは岩井さんの意図したのも同じようで、「音楽を『聴く』人のための楽器」を作ろうとしたらしい。
ところで、最近のユーザー寄りの音楽を取り巻く動きを見ていると、こうした「音楽を演奏(配信)する側」と「音楽を聴く側」が重なる領域がどんどん大きくなってきている気がする。その背景にはかつての音楽演奏ゲームの流行による「擬似演奏による慣れ」や、テクノロジーを背景にしたDTM(デスクトップミュージック)や手軽な楽器などの存在があり、これらによって聴く側は演奏する側にいつでもシフトすることができるようになった。
そして、これに加えてニコニコ動画やYouTubeでの動画を用いた作品公開やセカンドライフなどでのリアルタイムライブなど、発表のインフラが整ってきたことが大きい。動画共有サイトはコメントで、セカンドライフなどのバーチャルワールドはリアルタイムにオーディエンスからのフィードバックが得られる。趣味で音楽を制作する者にとって、これほど素晴らしい報酬はない。さらにいうなら、ニコニコ動画やセカンドライフでの音楽活動がCDやリアルのライブ演奏につながるなど、よりドラマティックな展開も置き始めている。
この場合のテクノロジーは表現手段の一つである。音楽もその点においては同じものだ。
というわけで、さらなる考察やTENORI-ONの詳細レビューはまた今度・・・。以下のサイトでも書いてます。
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