ストーリーには人を惹きつける力があります。古来の伝承は物語形式で伝えられることで人々の記憶に残り、人々を動かし続けていました。そして、過去から現代にいたるまで名演説といわれるものにはほぼ例外なく、ストーリーの力が組み込まれていました。
本書はそうしたストーリーの力を巧みに織り込んだ歴史的な演説を通して、その源である「ストーリーの黄金律」を解説しています。
「ストーリーの黄金律」とは、
1)何かが欠落した、もしくは欠落させられた主人公
2)主人公がなんとしてもやり遂げようとする遠く険しい目標・ゴール
3)乗り越えなければならない数多くの障害・葛藤・敵対するもの
の3つ。これらが含まれていることで人は感情移入しやすく、心を動かされやすく、行動に駆り立てられやすくなるのです。「人類共通の感動のツボ」はハリウッド映画などにも見られます。実際、先日読んだ「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」にも通ずるものがありました。
■『アバター』のジェームズ・キャメロン監督も学んだ脚本教材「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」
あまり普段から演説をする機会がある人はなかなかいないと思いますが、仕事における場面や日常の会話などにも参考になりそうです。
そういえば、昨年末にいったあるイベントでとある政治家の方が「日本にはまだストーリーで付加価値をつけて世界に出ていけるものがたくさんある」という話をしてました。いわゆるブランド品などにもいえますが、ストーリーは説得だけでなく、それ自体が付加価値にもなるという例かと。
ところで、世界大恐慌の最中に就任した第32代アメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトの章で、当時、ルーズベルト大統領が国民に(当時の最先端メディアである)ラジオで語りかける番組「炉辺談話(Fireside chats)」についての解説がありました。これによって国民は大統領を従来よりも身近に感じることができるため好評だったそうですが、ラジオによる肉声が、従来の文字中心のメディアでは伝えきれない、特に人間臭い部分を伝えられることが評価されていたというのは興味深いです。こうした役割は、今ではブログやTwitterが担っています。政治家にとって、そうした「身近に感じてもらう」ことが常に課題としてあったからこそ、新しいコミュニケーション手段が積極的に試されていったのかもしれませんねー。
第1章「小泉純一郎 郵政解散演説」
第2章「田中角栄 ロッキード選挙演説」
第3章「バラク・オバマ 2004年民主党全国大会基調演説」
第4章「ジョージ・W・ブュシュ 9・11直後の演後の演説」
第5章「ジョン・F・ケネディ 大統領就任演説」
第6章「フランクリン・ル―ズベルト 大統領就任演説」
第7章「マーティン・ルーサー・キング 私には夢がある演説」
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