小学生のころ、クラスのみんなで演じる劇のために脚本らしきものを書きました。
大学生のころには自分が制作するビデオ映画のために脚本らしきものを書きました。

でも、本書を読んだ今、それは本当に「らしきもの」でしかなかったことが(やっと)わかりました。

本書「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」(原題「Screenplay(スクリーンプレイ)」)は国際的評価を得る脚本家シド・フィールドによる「すばらしい脚本を書くためにはなにをしなければならないか」を示している本です。多くの著名脚本家がかつて本書を教材として学んだそうで、『タイタニック』『アバター』のジェームズ・キャメロン監督もその一人なのだそうな。

本書では映画脚本の基本的パラダイムである「第一幕(発端/状況設定)」「第二幕(中盤/葛藤)」「第三幕(結末/解決)」、そして第一幕の最後におこる「プロットポイント1」、第二幕の最後で起こる「プロットポイント2」という形を何度も振り返りながら、主題設定、登場人物の想像・構築、ストーリーと人物設定、エンディングとオープニング、プロットポイント、シーン、シークエンス、ストーリーラインなどを解説していきます。

特に書き始めるまでに大事なのは、

1.エンディング
2.オープニング
3.プロットポイント1
4.プロットポイント2

で、しかもこの順番なのだとのこと。
その他、詳しくは本書を見ていただくとして、これを読んでおくと映画の見方もまた変わりそうです。

ただ、同時に「映画を素直に楽しめなくなるのでは?」という懸念もありそうです。が、単純にストーリーを追いたいという場合はそうかもしれませんが、なんというか、料理を食べたときにただ「おいしい」というのではなくて、料理をする人が料理を食べたときのような、一段深い理解や楽しみ方ができるような気がします。

映画をよく観る人にもお勧めです。

また、本書は脚本の書き方の本ではあるのですが、どうしても書けなくなってしまったときの対処法や、いざ書こうとすると他のことが気になってしまうという妨害衝動との付き合い方や、他人との共同執筆時のコラボレーションで気をつける点など、普段の生活や仕事においても参考になる箇所が多くあります。一般的な「仕事術」として語られるのではなく、あくまで「脚本を書く」という別ジャンルにおける指摘である点がかえって説得力がありますね。

例えば、仕事しようとすると思わず掃除を始めてしまうというような「妨害衝動」への対応は、「それが妨害衝動だということを認識し、受け止め、味わえばいい。罪悪感を持ったり、意味がないと思ったりしなくていい。それが妨害衝動であると認識した上で(妨害衝動と)反対方向に向かえばよいのだ」(要旨)としています。僕はこのくだりがとても印象に残りました。なんでだろーなー(棒読み)

その他、ビジネスとして脚本を書く場合に留意すべき点も随所で指摘されています。

例えば、主人公の年齢ひとつとっても、ヒットしやすい売れ筋の俳優を想定して設定する、や、シーンに各情報はセットの制作や俳優の演技への影響をふまえる、といったものです。

この観点は、

脚本とは、売るために書くのである」(95ページ)

という言葉に凝縮されています。

一方で、厳しいビジネスの世界を生き抜くための防御策についての記述もあります。アイデアを盗まれないために自分の脚本の所有権を明白にする方法もそのひとつで、これは「自分の脚本のコピーを封書に入れて自分宛に書留で送る」というもの。受領書を取っておくことで書いた日付を証明できます。自分宛に届いた封書は開けずに保管することも忘れずに。厳しい世界です…。

しかし、それでも脚本を書く意味について本書は最後にこう締めくくっています。


何かをしたい、伝えたいから脚本を書くのであって、お金を稼ぐために書くのではないだろう。しかもそれではうまくいきっこないのだ。


(335ページ「あとがき」より)

そう、お金ではないのです!

・・・って、あれ?売るために書くものなんじゃ・・・。

先生!ストーリーが矛盾してます!(笑)

  One Response to “『アバター』のジェームズ・キャメロン監督も学んだ脚本教材「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」”

  1. ストーリーの力をあれやこれやで活かそう!「あの演説はなぜ人を動かしたのか」
    ストーリーには人を惹きつける力があります。古来の伝承は物語形式で伝えられること…

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