前から「モバイル業界」 という単語に違和感があった。
以前に書いた「ケータイ、スマートフォン、ネットブック…モバイルネットデバイスの「区分」の意味 – Communication for the rest of us」でも触れたように、デバイスの区分に意味がほとんどないように、業界区分も本質的な違いを意味するものではないように思う。
ちょっと前にでた夏野剛さんのインタビュー記事を読んで、その違和感は強くなった。
■「世界と逆に向かう日本の携帯業界」夏野氏に聞く MWC2009 モバイル-最新ニュース:IT-PLUS
欧米では(グーグル、アップルなど)インターネットプレーヤーが中心となって革新を起こし始めてきた。いままでは、WAP(Wireless Application Protocol)などを含めていわゆるモバイルインターネットの標準化はことごとくうまくいってなかった。
だが、最近は標準化の動きとはまったく関係のないインターネット企業が登場してきて新しいサービスを次々投入している。モバイル業界には衝撃的なことと言える。
ここでいうモバイルは携帯電話を指していると思うが、いわゆる「モバイルサービス」といわれるものの多くは、というかほとんどは音声通話を必要としない。つまり、「電話」機能はなくていい。単なる小さなモバイル環境で使えるネット端末なのだ。
夏野さんは「インターネットプレーヤーが中心となって革新を起こし始めてきた」と話すが、これはかつて「携帯電話」のおまけ機能的であったネット接続機能が高機能化してきたことでPCベースのネットに近づいていき、いまや分ける必要がなくなってしまっただけだ。モバイルならではの仕様も(PC中心のネットから見て)大したハードルではなくなった今、PCベースのサービスをネットブックやスマートフォン、ケータイ(と呼ばれる)「小さい画面のネット端末」に対応させることは難しいことではない。物理的な制約によってフルサービスの提供が難しいならばサブセットを提供すればいいし、逆にGPSなどを活用することでPCとは違うサービスも可能だ。しかし、こうしたサービスでも「携帯電話」である必要はない。
モバイル業界もネット業界のサブセットになった。つまり、「インターネットプレーヤー」がモバイル業界に「入ってきた」のではない。モバイル業界はすでにネット業界の中にあるのだ。そして今にもその境界線は消えようとしている。
「ネット業界モバイル系」など、新しい呼び方を考えるべき時なのかもしれない。
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