日常生活において、私達が何かを「得る」ということは、ほとんどの場合、「買う」ことを意味している。オフィスのデスクやイス、文房具、服、家に至るまで。「作る」という選択が一般的なのは食事くらいだろうか。作らなくてもたいていのモノは手に入る。問題はお金だけだ。
一方でそうした状況は「売ってないモノ」イコール「ないモノ」という感覚も生み出している。ちょうどネットで検索して出てこない情報は「ないもの」とされてしまうように。
ところが、そうした状況に対して近年「モノづくり」を見直す動きが高まっている。産業としてのモノづくりではなく、生活者としての日常におけるモノづくりだ。あったら便利だなと思ったものを実際に作ってしまうといった意欲的なものから、いつもは買っているけれども、作ってみたいから作ってみる、という純粋に手作りを楽しむものまで様々なケースがある。先頃話題になった「勝手に入るゴミ箱」は前者の最たるものといえるだろう。飛んでくるゴミを追ってキャッチするこのゴミ箱は、車輪などの機械部分の設計からゴミを追うプログラムまですべてが手作りだ。制作過程を紹介した動画は公開からわずか10日ほどで計300万再生を超えた。
最近はこうした個人のモノ作りをテーマにしたカンファレンスが開催されたり、書籍「FabLife(ファブライフ)」が出版されたり、レーザーカッターが常備されたカフェ「FabCafe(ファブカフェ)」が話題になったりと普通の人が気軽に挑戦できる環境が整いつつある。
夏休みの工作を思い出しつつ、モノ作りを楽しんでみるのはいかがだろうか。
(本記事は「東京IT新聞」に寄稿させていただいた記事の元原稿です。許可を得てアーカイブとして本誌掲載の1週間後を目処に掲載しています。本誌は画像付きですが、こちらはテキストのみの掲載になります。)
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