メトロポリタン美術館でハトシェプスト女王のスフィンクスを鑑賞した人なら、ふとネコ耳をつけてみたいと思ったことはないだろうか。もしくは少し髪型(?)を変えてみたいと思ったことは?
音楽に編曲やカバー曲が、絵画にコラージュがあるように、立体像も後世のアーティスト(もしくは日曜アーティスト)が自由に手を加えることが可能になりそうだ。
この6月にニューヨークのメトロポリタン美術館でその最初の試みが行われた。これは同美術館の所蔵作品を3Dデータ化し、ダウンロード可能な形で公開するというもの。3Dデータ化にはCADソフトなどの3Dデザインソフトウェアを提供するオートデスクが開発した「123D Catch」が使用された。これは様々な角度から撮影した写真を元に3Dデータ化を行うことができるサービスだ。すでに3Dプリンターメーカーのメーカーボット・インダストリーズが運営する3Dデータ配布サイト「Thingiverse」からダウンロードすることができる。
ハッカー精神あふれる冒頭のような使い方はアート好きな方には許しがたいことかもしれないが、3Dデータを3Dプリンターで実体化することで、写真やディスプレイで眺めるだけではわからない立体物としての魅力を感じることが出来る。これはアートを学ぶ人にとっても有用に違いない。さらに3Dデータ化することで時間に伴う腐食や事故による破損から、少なくともその形の記憶を守ることができるのだ。
こうした試みに対するメトロポリタン美術館の英断に続く動きを期待しつつ、その先に生まれる作品を楽しみにしたい。
(本記事は「東京IT新聞」に寄稿させていただいた記事の元原稿です。許可を得てアーカイブとして本誌掲載の1週間後を目処に掲載しています。本誌は画像付きですが、こちらはテキストのみの掲載になります。)
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