3D映像がまだ珍しかった頃、抑えがたい2つの衝動に駆られた。ひとつは映像に触ろうと思わず手を伸ばしてしまうこと。もうひとつは横(あるいは下)に回り込んで別の角度からのぞきこもうとしてしまうことだ。

 現在主流である3Dメガネで左右の目に別々の映像を見せる「両眼視差」による立体視では、これらの実現は難しい。しかし、別の方式であれば触ることは無理でも「のぞきこむ」ことは可能になる。

 立体感を得るために「運動視差」を利用する方法だ。これは映像を観ている人が画面に対してどの位置から見ているかを検知し、見ている角度に応じた画像を表示することで様々な角度から3D映像を見られるというものだ。

 先日リリースされたiPhoneアプリ「i3D」はこの運動視差によって立体視を実現するアプリだ。iPhone4やiPad2の前面カメラを利用してユーザーの顔の位置をリアルタイムに認識し、適切な角度の画像を表示する。無料アプリなのでぜひ見てみてほしい。

 両眼視差を利用した3D映像のように「飛び出す」感覚はないが、観ているユーザーの動きに合わせて動くため、また違う感覚が楽しめる。他に運動視差を利用した試みとしては慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の舘教授らによる多視点裸眼立体ディスプレイ「RePro3D」などがある。

 ところで、2009年にはすでにこの技術を応用したゲームが発売されていた。画面の中の美少女とインタラクティブに楽しめるというものだ。新しいテクノロジーが最初に活かされるジャンルはどのテクノロジーも変わらないらしい。

(本記事は「東京IT新聞」に寄稿させていただいた記事の元原稿です。許可を得てアーカイブとして本誌掲載の1週間後を目処に掲載しています。本誌は画像付きですが、こちらはテキストのみの掲載になります。)

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