「情報力」(橋本大也/著)を読んだ。著者の橋本大也さんとはオフィスが一緒ということもあり、僕が編集長を務めている3Dインターネット/バーチャルワールドの専門情報サイト「THE SECOND TIMES」編集部宛に献本いただいたものだ。そちらの媒体のテーマと少々異なる本のため、こちらで紹介するが、これは献本されていなかったらおそらく自分で買っていたかもしれないくらい魅力的な本だ。厚みや装丁も個人的には名著「アイデアのつくり方」にも通じるシンプルな価値を感じる。

本誌は「これまでになかった『情報』を『知恵』にする技術」と表紙コピーにもある通り、紹介されている手法がツールとして使われることを目指している。そのため、構成も簡潔で明確だ。「情報力とは何か」「情報収集」「情報整理」「情報分析」「情報活用」とチャプタ-分けされた中に、それぞれポイントが6から最大でも10に絞り込まれている。見開き2ページで1つのポイントとなっていて、本誌の言葉を借りれば、そのひとつひとつが「情報パーツ」として必要十分な要素を持っている。この本自体が「情報力」の成果物のひとつであるということが分かると同時に、紹介されている手法の効果を見ることができるだろう。
ところで、こうした本はともすればTipsのカタログ的になってしまうきらいがあるが、構成からもわかるように本誌はそうはなっていない。例えば、76ページで紹介されている「ネットを使って”ハイパーフェルミ推定”」という手法はそこまでに紹介してきた情報の収集・整理を通して蓄積した「情報パーツ」の活用法として述べられている。フェルミ推定とは見積もり方法のひとつで「シカゴにピアノの調律師は何人いるか」というような問いに対して、様々な「常識的な推定」を組み合わせて見積もる方法だ。しかし、実際にやってみると分かるが、この「常識的な推定」というのが結構難しい。慣れてくれば推定可能なレベルまで段階を細分化することもできるが、それにも限界があるし、見積もり精度にも影響してくる。ネット上の情報をパーツ化し、整理しておくことで、こうしたもう一段上の活用が効率的に行えるようになるだろう。
また、小さいところだが、各ページ下に紹介されている「使えるツール39選」もメジャーなツールから人ひねり聞いたお役立ちツールまで厳選されいる。一覧しておくと日常的に、また、ふとした時に役立つに違いない。
平成7年から平成17年の間に人々が触れる情報の流通量は400倍になっているという。今はそれ以上だろう。しかし、我々は圧倒的な情報の水流と同時にネットというツールも手に入れた。そのツールは使い方によって救命浮き輪にも豪華客船にもなりうる。「ハイパー個人の情報資産運用術」を身につけて、優雅な船旅を楽しみたいものだ。




  One Response to “「情報力」(橋本大也/著) 圧倒的な情報量を徹底活用する「ハイパー個人」”

  1. 機能としてのマスメディアと流通経路としてのインターネット
    ダイヤモンド・オンラインに掲載されている岸博幸さんの記事「

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