少々年を越してしまいつつも読み終えました。

とてもわかりやすくまとめられています。例えば、本書に欠かせない「レーザー」は言葉としてはあまりに一般的な一方で、本当の性質については多くの人が正確に知らないのではないかと思いますが、本書では最初の方で性質や応用分野について丁寧に、しかし細かいところに突っ込みすぎず説明されているので、僕のような全くの門外漢でも理解していくことができました。

個人的にはレーザーに関する解説のところで、「核融合は宇宙旅行時代のエネルギーだと考えています。」とか「レーザーを使った宇宙開発」とか「(レーザーを使った)デブリ(宇宙ゴミ)の除去計画」とか「レーザーを使ってロケットを打ち上げようという計画」とか、至る所で挿絵付で語られているのが印象的でした。レーザーの説明が終わって「宇宙ももう出てこないかな」と思っていたら、不意に「宇宙エレベーター」まで登場しましたし(笑)。

ちなみに、なぜこんなにも宇宙に反応しているかというと、以下のようなサイトもやっているからだったりします。

宇宙旅行を知るサイト☆宇宙観光企画-uk2-

さて、本書で驚いたのはレーザーの作り方。レーザーポインタのように電気を使うのかと思いきや、なんと太陽光から直接レーザーを作るのだそうです。

それを可能にするのがクロム-ネオジムYAGレーザー媒質という薄緑色のきれいな物質。これに太陽光をあてることで光の波長が整えられレーザーになるそうな。

以下はそうして作られたレーザー(太陽光励起レーザー)でステンレス板に穴をあけているところ。

このレーザーを使うことで、海水中のマグネシウムを精錬するのだそうです。つまり、二酸化炭素をほとんど出さずにマグネシウムを作ることができるのです。そして、エネルギーとして使った後にでる酸化マグネシウムはまた太陽光励起レーザーでマグネシウムに・・・。

以下は太陽光励起レーザーを酸化マグネシウムにあてて、マグネシウムを蒸発させているところ。蒸発させたものを銅板に蒸着させるなどして取り出すのだそうな。

これはすごい・・・。

インパクトがあるので、どうしても飛躍したものに感じられがちですが、本書ではその発想の原点から技術的な背景、課題、その克服方法、失敗、事業化への道筋、それによってもたらされる大きな社会的変化まで、順を追って語られているので、最後まで読み終えるとそれが必ずしも不可能ではないことに気づくと思います。

それはそうと、この本、「マグネシウム文明論」とありますが、実はもう一つの柱として「海水の淡水化技術」があるのですね。本書でも「マグネシウム循環社会」のビジョンがはっきりと浮かんだのは「2025年には30億人分の淡水が不足する」という雑誌記事を読んだことからだと語られています。1kgの中に1.29gのマグネシウムを含むという海水からマグネシウムを精錬すれば同時に炭水もできる!一石二鳥!というわけです。

ただ、実現までのロードマップ、特に利益を出して事業を回していくまでの過程ではマグネシウム周りの技術だけでは難しいようで、マグネシウム精錬の副産物としての炭水化技術ではない「ペガサス浄水化システム」という方法によって、当面の利益を目指していくようです。しかし、これも2010年には1000台規模で販売できる見通しとのこと。うらやましい。

そして、もう一つ気になったのは既存設備からの移行に関する部分。火力発電所や自動車、電機製品などを「マグネシウム対応」させるまでのシナリオが、それまでとうって変わってざっくりしすぎな気がしました。技術の優位性もあり、移行しなくてはいけない社会的理由も確かにありますが、スムーズな移行によって理想を早期に実現するためにはもういくつかのハードルがあるように思います。

とはいえ、読んでいるうちに未来が明るく感じられてきたことも事実。
もろもろ含めて、期待です。

それと、クロム-ネオジムYAGレーザー媒質からレーザーが発振されているところを是非見てみたいです。

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